漆器工房 鈴武

introduction

会津の中心地からすこし離れた場所に漆器工房鈴武はある。漆器に携わることそれは戦いだったのかもしれない、取材の中で彼らは何度も“本物の漆器”と口にした。約400年の歴史を持つ会津漆器、繁栄と衰退を経た中で置き去りにされた本物の漆器が宿すその意味と魅力に迫ります。

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その4 安全な器

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鈴武に伺い店舗内で他のお客さんにまぎれ漆器を眺めていると、何度も「口にするものは安全じゃないと」との声が聞こえてくる。
漆器について、その魅力を知りたく伺い最初に聞こえてきたのは「安全な器」という言葉。
その漆の塗りや蒔絵の美しさではなく、器としての安全性だった。
食器の安全性についてなど気にしたことなどなく、ましてや安全ではない食器があるとは考えもしなかった、何となく耳にしたことのある環境ホルモン、それが漆器店で聞くことになるなど思いもしなかった。


木地師

木地師

まず正されたのは漆器の意味するところ。
何気なく100円ショップでも会津塗として食器が売られており、漆器店でもその種類は多彩で値段も様々、数ある漆器店をハシゴすれば似たような商品でも値段にばらつきがある。
その昔、漆器が庶民の生活の中にあった時代、化学製品も陶磁器も庶民の生活にはなかった頃、素材は木材のみコーティング剤は天然漆しか存在しなかった、漆器といえば全てが天然木に天然漆で塗りのコーティングを施したものを指した。


塗師

塗師

しかし時代の変化と共に素材にも塗りにも化学製品が使われるようになり、漆器(塗りでコーティングした器)はその意味を広く持つようになった。
もう漆器とは天然木の天然漆を施したもののみを指すものではなくなった、合成樹脂やガラスなどの素材に化学塗料を施したものまでが漆器に含まれるようになった。
漆器・会津塗として手にとった器が漆を使っていない場合もあるのだ。


伝統工芸士石川さん

伝統工芸士石川さん

彼は何度も「本物の漆器」と口にした。
「本物の漆器」それは昔から存在した天然木に天然漆を施した器。
店内で何度も聞こえてくる「口にするものは安全でなければいけない」
彼らが伝えようする「本物の漆器」の姿、それは「安全で、実用的、美しくて、修理が出来て、地球にやさしい」のだ。

投稿者: cool会津編集長