宗像窯

introduction

夜も完全に明けやらぬ頃、本郷瀬戸町通りには人が溢れ出す、8月の第1日曜日は本郷せと市だ、お城のあるところには窯元が栄えるとお城の瓦を焼いたのが本郷焼の始まり。郷土料理の鰊の山椒漬けは海が遠く山に囲まれた会津の貴重なタンパク源、そのために宗像窯の“にしん鉢”は生まれ、それはベルギーブリュッセル万国博覧会で最高賞を受賞することとなる。風土が宿る器から器が見せる世界への第一歩が宗像窯から始まった。

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その1 湯呑茶碗に見た器の力

1-1ろくろの上、淀みない滑らかな手元の動きから器がすっと出来上がってゆく。
出来上がった器に糸を通し彼は断面を見せた、底から縁までその厚みに違いがある、器の美しさを保ちながらも少しでも重みを軽く、そんな気遣いが断面にはあった。
その作りの淀みなく美しいさまに見とれていると、「これぐらいは誰でも出来るようになりますよ」と彼は言った。

本郷焼・宗像窯八代目当主・宗像利浩。彼はいつ訪ねても柔らかな雰囲気で迎え入れ、どんな無知な質問をしても言葉を選び丁寧に伝えようとしてくれる、そして会話が途切れた時には不思議と穏やかな静けさがそこにはあった。

1-2「和食器と洋食器の違いは何だと思いますか」と聞かれ、和食器は手に持つことを前提に作られているのだと教え。和食は五感で楽しむ料理、料理が美しく引き立つことを考え肌でも目でも楽しめるようにと器を作り、そして料理人は五感で楽しめるように器の力を活かし料理を作るのですと話し、改めて差し出された湯呑の高台に触れると意外に柔らかい手触りだということに気付いた。
「茶碗というと何を思い浮かべますか」と聞かれ「ご飯」と答えると、それは飯碗と呼び、茶碗は文字通りにお茶のための器「抹茶碗」を指すのだと教えられ、「番茶といわれて何色のお茶を思い浮かべますか」と聞かれ「茶色」と応えると、それは「ほうじ茶」で、番茶とは夏以降に収穫される三番茶、四番茶で色は緑色なのだと教えられた。(※東北・北海道では番茶をほうじ茶と解することが一般的)

1-3なぜそんな事を話したのだろうかと番茶について調べると、一番茶、二番茶に比べ番茶は葉が固く、多少熱いお湯を注いでもなかなか葉が開かないため渋みが少なく一般的にほうじ茶に間違われやすいのだと知った。
そして料理長に器についてたずねると、料理から器を選ぶのではなく器を見てからそこに合う料理を考え、器から料理が生まれることもあるのだと、料理と器どちらかが引き立て役ではなくその両方が主役なのだと教えられた。

器はその本質にあった環境で一番その力を発揮するのですと彼は話す。
高台の意外な柔らかに気づかされた湯呑茶碗、彼の話す本質の意味合いが少しばかり見えた気がした。

投稿者: cool会津編集長