会津田島祇園祭

introduction

山々に囲まれひっそりと佇む南会津町。ここに日本三大祇園祭の一つ会津田島祇園祭がある。約800年の歴史を受け継ぎながらも人口が減ると共に祭りの規模は小さくなった、それでもこの祭りは地元の者によって毎年欠かさず行われている。地元の者にとって会津田島祇園祭とはどういう祭りなのかその魅力を探ります。

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その5 例祭・渡御祭

IMG_2596毎年降り注ぐ夏独特の通り雨が、アスファルトを冷やし束の間の涼しい空気を運んでくる、熱気あふれる屋台引きの男衆への束の間の休息だ。
祭りの本道には4台の祭り屋台が走り、“オーンサーンヤレカケロ”と子ども達の掛け声がそれぞれの屋台から木霊する。神様に楽しんでもらうために始まった屋台運行、年に1度のこの時を誰もが本気で楽しんでいる。
屋台の見所はその屋台同士の喧嘩だろう、2台の屋台が全力で衝突寸前まで走りこんでくる、衝突を慄いていては男がすたる、子ども達と男衆の気合が1つに屋台と共に突っ込んでくる。睨み合った2つの屋台、交互に響き渡る子ども達のかけ声が次第に大きくなる、男衆と子ども達が1つになる時、屋台は強く大きくなる。

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会津田島祇園には沢山の見所があるが、朝早くに始まる花嫁行列も見所だ。
七行器行列と呼ばれ花嫁衣装に身を包んだ女衆が行器と呼ばれる器にお神酒などのお供え物を神前に献上する儀式だ。花嫁衣装の女衆と上下姿の男衆約80人がお党屋本から約1キロを練り歩く。皆がカメラ片手に花嫁たちの登場を待つ。

IMG_2687そして屋台歌舞伎だ、メイクを施し衣装を身にまといついに舞台が始まる。観客が屋台に集まり、カメラのフラッシュがたかれる。白く薄い緞帳の中、いつもと違う環境に彼らは落ち着いて見える。空気が静まり返るわけでもなく祭りの賑やかさの中、観客と神様に楽しんでもらうための屋台歌舞伎が始まる。彼らにとって楽しませる相手が神様であろうと見知った顔であろうと演じる想いに違いはない。

IMG_2764毎年この歌舞伎を見ている人はその子ども達の成長に驚き喜び、初めて観る人はその演技に心打たれるだろう、そこに感じ取れるものは歌舞伎への純粋な熱意だ。
祭りの熱気冷めやらぬ中、彼らの迫真の演技が祭りを練り歩く者達の足を止め引き寄せる、時折垣間見えてしまう稚拙さが観る者を和ませ笑わせ、子どもとは思えないどすの利いた台詞が観るものを驚かせ惹きつける。熱意に満ちた演技に時折見える子どもらしさも見所の1つだろう。

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IMG_2617灯籠に導かれた先拝殿に詣でればそこは独特の空気に満ちている。
ここに祭りの熱気は届かない、毎年降り注ぐ夏の通り雨が遠くの空に稲妻を光らせ近づいてくる、大降りの雨にはならない、祭りを盛り上げる者達への恵みの雨、祭りの日この町には神の気配が近くなる、それは畏れとは違う気配、どこか親しい神の気配だ。

【会津田島祇園祭】その6につづく

投稿者: cool会津編集長