その3 日本酒の原型
10月、気温が低くなり、吐く息が白くなり始め、酒蔵での酒造りが始まる。
指揮を執る南部杜氏・佐藤さんはこの時期になると岩手県から会津に入り、国権酒造に泊まりこみで酒造りを始める。

蒸しあがった酒米
午前8時に伺うとすでに米が蒸されており、冷えて張り詰めた空気の酒蔵に蒸気が立ち込めていた。
お米の甘い香りのなかホクホクに蒸された酒米が冷却機の中へ流れこむ。
酒米は精米の段階で心白を中心に60%にまで削られおり、食米に比べると少し小さくツヤツヤと輝き、食感はもち米のようにもちもちと弾力がある。

室:米麹づくり
“室(むろ)”と呼ばれる高温多湿の部屋で、冷却した蒸米に種麹の胞子を振りかけ混ぜあわせる、温度と湿度の保たれた室の中で、胞子は蒸米の水分に増殖し米の中心部にまでその菌を増殖させていく、そして48時間後には米麹が出来上がる。

麹
出来た米麹は小さな樽で水・蒸米・清酒酵母と混ぜあわせ、2週間程かけ酵母を大量に育てる。
酵母が増殖した樽に顔を近づけると強いアルコールと爽やかな香りが鼻を刺激し、表面には吹き出したガスの泡が浮かび上がっている。
これが酒母(日本酒の原型)となる。

酒母
失礼ながら造り方を1から聞く取材に対して佐藤さんは細かく答え、事務所でも資料や造り過程の資料を惜しみなく見せてくれる、間違った質問をすれば正しく訂正が入る、精確に造る人は正確に教えようとしてくれる。