宮泉銘醸

introduction

“写楽”それは日本酒を愛好する者なら一度は呑んだことがあるだろう。今日本酒を特集した雑誌でもよく目にする美酒だ。天才と謳われた浮世絵師・東洲斎写楽の名を持つそれは、どの季節にあってもどのような環境にあっても洗練された美しい味わいを感じさせてくれる。洗練された美しさを感じさせる日本酒、それはどのようにして生まれるのだろうか。

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その2 全てを否定した兄の造り

それまでの全てを否定するところから始まった兄・宮森義弘の宮泉銘醸。
それは通念とされていた造りをも否定することもあり、そんなやり方はもちろんのごとく対立を生んだ。
今宮泉には造りの経験のない者のみが集まっている、余計な経験は反発を生む。

その2-1「前の杜氏は絶対に研究室を見せてはくれませんでした、兄はそんなのは馬鹿らしいって言って、研究室を広くして蔵人に開放しました」
畳2枚ほどの広さだった研究室は広くなり最新の分析機器が導入されその内容は蔵人全員に開放され知識と経験を得る場所へと生まれ変わった。


蔵の中の改装も徹底したものだった、それは単純に利益を求めた人件費の削減や大量生産の為のための投資ではなく、全ては原料の品質を最高の状態に高めるため。
設備投資をしても造りにかける手間は減ったというよりも増えたかもしれない、その手間が宮泉の酒を生み出している。

その2-2仕込み水にかけるフィルターは通常よりも多くし不純物は全て取り除き必要なものはしっかりと残す。酒米は大量に蒸かすよりも少量のほうが美味くなる、浸水させるための容器も小分けに。蒸米の移動は最初に移動させたものと最後のものでは温度差が出てしまい品質にも差が出る、その差をなくすために特注のクレーンを入れて移動はすばやく温度差は極力減らす。もろみの入ったタンクは不純物が入らないように常に蓋をして管理し、タンクの中で長期保存するようなことはしない、空気に触れる割合が多い分酒質に影響が出るため瓶に詰め保存をする。搾りの工程は特に空気に触れる瞬間でもある、搾りを行う工程さえも室内の温度管理が出来るように、そして極力空気に触れないようにとなっていた。

その2-3全ての作業場が清潔に温度も適度に保たれた蔵の中、彼の説明は理論的であった。
宮泉の全てを否定するところ、通念をも否定するところから始まった兄のやり方、それは伝統が重んじられる世界の抵抗勢力の多い中で、誰をも納得させるために、そして仲間となった経験のない蔵人達とより美味い日本酒を造り出すために、求める日本酒に対してより理論的に誰よりも真摯に向き合う必要があったのかもしれない。
「もしも搾りのタイミングが夜中だとなったら僕らは躊躇無くやります、もちろんそんなことにならないように計画的に造っていますが」
蔵の中にはその品質をどの工程においても最高まで高めようとする蔵人達の意思が見えた。

投稿者: cool会津編集長